猫と英語と

英語の勉強の事。猫の事。

猫と口内炎その1

慢性の猫の病気の中で、物凄く大変なものの一つに難治性の口内炎があると思う。

 

猫にとって、口内炎はたかがではない。下手をしたら命に関わる病気だ。人間だと口内炎だけで命に関わる事はまずないだろうが、猫の場合はありうるのだ。

 

口内炎がひどくなると、口の中の皮膚が炎症で溶けていき、酷くなると口蓋の骨が見えるところまでになる。そうなると、もはや食事が取れない。痛すぎるのだ。水分を飲むことだって痛くて痛くて出来なくなる。あらゆる生物にとって食事ができない事は命取りだ。お腹が減って食べたいのに、痛くて食べられない。そんな状態の愛猫を見守る事は、飼い主にとっても、つらく悲しい時間だ。また、大抵のケースの場合、そこまで口内炎が悪化する中で、全身状態も悪くなってしまっており、出来る事があまりに少ない場合も少なからずあると思う。

 

 

口内炎は繰り返す?

動物病院で行われる口内炎の治療は、基本的には抜歯とステロイド投与だ。抗生物質インターフェロン、様々なサプリを紹介してくれる病院もある。中には漢方を紹介してくれる病院もあるし、飼い主さんも必死になって治療法を探すだろう。なのに、口内炎は完治しずらい病気なのだ。

 

私は6年くらい前に、口内炎で、もはやちゅーるすら満足に食べる事が出来なくなった子を路上からスカウトした。その経験も踏まえて、猫の口内炎について考えてみたい。

 

 

お口の痛い子の保護は難しい

人馴れしていない、お口の痛いお外っこ(野良っこ)の保護は困難を極める。通常お外っこの保護は、捕獲機の中にご飯を仕込んで、ご飯の匂いにつられて猫が捕獲機に入るときを待つ。ところがお口が痛くご飯が食べられない子は、食べ物で釣る事が出来ない。加えて、私が保護したい子は、数か月前に他の保護団体が、避妊のために捕獲し、リリースした子だった。つまり捕獲機は怖いとインプットがされてしまっていた。後ろ足が片方欠損した三毛猫ちゃん。ビビりで慎重。そうでないとお外で生き延びれなかっただろう。

捕獲、保護を決意してから、実際に保護出来るまで4か月かかった。4か月の間に彼女のお口の状態はどんどん悪くなり、よだれがたれ、最初は食べれていた小さなカリカリが食べれなくなり、スープですら、痛みで雄たけびを上げながら2日に1回、ほんの数口食べれるだけのところまで悪化した。

そんな状態の為、捕獲機での保護は諦めざるをえなかった。勿論、何回も挑戦したが、すべて失敗だった。このままでは保護出来る時は、彼女が倒れた時になってしまう、と気持ちだけは焦る。さらに季節は冬に向かっており、今保護出来なければ、彼女がこの冬を外では乗り越えられない事はあまりに明白だった。

 

彼女が小さく丸くなって眠る寝床近くに、キャリーを設置した。キャリーの入り口の扉の取り外しが出来るものだ。扉を取り外した状態で、入り口がキャリーに入っている彼女から出来るだけ死角になるように設置。キャリーを寝床にしてくれるように祈った。数日後、キャリーに入っている彼女を目撃。でも人が近づく音を察知すると、するりとキャリーから出てしまう。まだ、無理だった。それから2週間、彼女がどの時間なら一番油断して眠っているのか、必死に観察し、捕獲を朝に行う事を決めた。今回失敗すれば、恐らくもう次はない。緊張で心臓が張り裂けそうだった。前日の夜、彼女がキャリーから出て、叫びながらちゅーるを食べている間に入り口の扉を設置。朝、キャリーで寝ていてくれることを祈る。

 

当日の朝、彼女はキャリーの中で寝ていてくれた。気配を消せるだけ消し、キャリーに後ろから近づき、一気に入り口の扉を閉める!タッチの差だった。逃げ出そうとした彼女の前足が入り口を閉める私の手に当たった。キャリーの中で逃げ出そうと暴れる彼女。私は安堵からへたり込みそうだった。

 

まずは病院へ

ぶっちゃけ保護した彼女は汚くて臭かった。病院に連れていき、初期治療と抜歯をお願いした。虱とダニで出血していて、保護に使ったキャリーには血が点々とついていた。人馴れゼロ。なのでウー!シャー!カッ!連発。麻酔下で、シャンプーをしていただき、駆虫と血液検査、ワクチンも打ってもらった。

歯は数本を残して、抜歯となった。口の状態はもう口蓋の皮膚が溶け出しており、先生からも、これは治らない可能性が高い、と言われた。幸い、内臓は正常値の中にあったが、こちらもまあ想定内ではあるが、エイズ陽性だった。白血病が陰性だったのには心からホッとした。難治性口内炎の可能性大、人馴れゼロ、エイズ陽性でも、白血病陰性で内臓が大丈夫なら、まだしてあげられることがある。こちらをにらみつけて、シャーシャーいう彼女に、お口治しておいしいご飯を食べよう!と約束をした。

 

 

ステロイドをどう考える

最初はステロイドを使わざるをえなかった。人馴れもないため、投薬も難しく注射で打ってもらった。私はひたすら猫の口内炎について調べた。結果、結論として、ステロイドの常用は避けたい。エイズ陽性の彼女、今後何かの病気の時に、いざというときに使えるよう、ステロイドは残しておきたい。また、ステロイド口内炎を治療するわけではない。病状を緩和するだけだ。そして徐々に効きが悪くなっていき、副作用が強くでるようになる。口内炎が完璧に治らないまでも、少なくともステロイドとは手を切れるようになるくらいにはしたい。ステロイドで状態を緩和している間に、口内炎を治していくしかない、そう決意した。ステロイドを使わないという結論はなかった。ステロイドで痛みを緩和しなければ、ご飯が食べられない状態だ。ご飯が食べられなければ栄養状態が整わず、彼女の回復力頼みの口内炎の治療は出来ない。

 

 

そんなふうに、彼女と私の長期にわたる口内炎との闘いが始まったのだ。